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特定技能の届出、「期限内到達」と「自己都合退職=受入れ困難届出」の誤解【専門家向け】

特定技能の届出制度は、令和7年の施行規則改正(定期届出の規定は令和7年6月1日施行)により定期届出が年1回に変更されるなど運用が変わった一方、随時届出の実務では今も基本的な誤解が繰り返されている。本稿では、特定技能所属機関(受入れ機関)・登録支援機関それぞれの届出の全体像と、実務でつまずきやすい論点を整理する。

1. 届出の全体像

特定技能所属機関(受入れ機関)

定期届出:対象期間は4月1日から翌年3月31日までの1年間で、翌年5月31日まで(5月31日が土日祝日の場合は翌開庁日)に提出する。四半期ごとから年1回への変更は令和7年の施行規則改正(定期届出の規定は令和7年6月1日施行)によるもので、四半期ごとの提出は令和7年4月15日期限分が最後となった。年1回の新ルールでの最初の提出は、令和7年4月から令和8年3月までの分を令和8年4月1日から5月31日までに提出するものである。支援の全部を登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関による支援実施状況も取りまとめて併せて提出する必要がある。(出典:出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」)

随時届出(6種類):届出事由が生じた日から14日以内(ただし、(5)基準不適合と(6)支援計画の実施困難は、運用要領ではその事由を認知した日から14日以内とされている)に、地方出入国在留管理局に提出する(随時届出Q&A A1-2)。

届出事由 参考様式 提出期限
(1)特定技能雇用契約の変更・終了・新たな契約の締結 参考様式第3-1-1号/第3-1-2号 提出期限事由発生日から14日以内
(2)支援計画の変更(支援責任者・担当者の変更、委託先登録支援機関の変更、自社支援への切替えを含む) 参考様式第3-2号 提出期限事由発生日から14日以内
(3)支援委託契約の締結・変更・終了 参考様式第3-3-1号/第3-3-2号 提出期限事由発生日から14日以内
(4)受入れ困難(自己都合でない退職、行方不明、傷病、1か月以上の活動未実施等) 参考様式第3-4号 提出期限事由発生日から14日以内
(5)基準省令の基準不適合 参考様式第3-5号 提出期限認知した日から14日以内
(6)支援計画の実施困難 参考様式第3-7号 提出期限認知した日から14日以内

(出典:特定技能外国人受入れに関する運用要領 p.119・p.121)

登録支援機関

定期届出:支援の全部を受託している登録支援機関に必要とされるが、提出は特定技能所属機関が行うこととされている。登録支援機関は、支援実施状況(参考様式第3-6号(別紙1))等の必要書類を所属機関に提供する。

随時届出:登録事項の変更、支援業務の休止・廃止、支援業務の再開(再開予定日の1か月前まで)の3種類である。このほか、支援計画の実施において特異な事案が生じた場合の随時報告として、「1号特定技能外国人支援計画の実施における特異事案報告」(参考様式第4-3号)がある。

2. 随時届出でよくある誤解

誤解①:自己都合退職には「受入れ困難に係る届出」が必要

出入国在留管理庁の随時届出Q&Aは、特定技能外国人が自己都合により退職する場合について、受入れ困難に係る届出は「必要ありません」とし、「特定技能雇用契約の終了に係る届出のみで結構です」としている(A5-1)。受入れ困難に係る届出の対象は、自己都合でない退職、行方不明、傷病、1か月以上の活動未実施等である(A1-1)。また、実際に退職するか否かにかかわらず、受入れ継続が困難となった時点で届出が必要となる。

誤解②:起算日は契約を締結した日

雇用契約の変更に係る届出の「変更年月日」は、契約を締結・合意した日ではなく、変更の効力が生じた日である(A2-7)。例えば9月1日に「10月1日から賃金を変更する」と合意した場合、14日のカウントは10月1日から始まる。

受入れ困難に係る届出も、起算日は実際に退職した日ではなく、退職又は1か月以上活動ができない原因となる事由が生じた日である点に注意が必要である。

誤解③:消印が期限内なら間に合う

期限の判定は郵送の消印ではなく、地方出入国在留管理局又は同支局への「到達」が基準である(A1-3)。期限直前の郵送は到達が遅れるリスクがあるため、電子届出システムの利用も含め、余裕をもって提出すべきである。

誤解④:軽微な変更は一律に届出不要

報酬又は労働条件以外の変更で、特定技能雇用契約に実質的な影響を与えない「軽微な変更」は届出不要とされている(A2-1)。ただし、運用要領第7章第1節第1の別表に示されているのはあくまで具体例であり、Q&A自体が例以外にも届出が必要になる場合があるとしているため、一律に不要と扱うのは危険である。

誤解⑤:随時届出は登録支援機関が代わりに提出できる

特定技能所属機関の随時届出は、所属機関自身が届け出る必要がある。出入国在留管理庁は、支援の委託契約を締結していても登録支援機関が届出を行うことはできないと明記している。支援を全部委託している所属機関ほど「届出も登録支援機関が対応してくれる」と誤解しやすいため、登録支援機関側から所属機関に明確に説明しておくべき論点である。なお、届出書の作成を他人の依頼を受けて報酬を得て行うことができるのは、行政書士法等の法令に基づきそれが認められている者に限られる(A1-7)。(出典:出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」)

3. 届出を怠った場合の制裁

届出を行わなかった場合又は虚偽の届出をした場合、一定期間(5年間)、特定技能雇用契約の締結ができなくなる場合がある(特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令第2条第1項第4号リ(9))だけでなく、罰金刑や過料(入管法第71条の4第1号又は第77条の2)に問われる可能性がある(A1-6)。

期限内に提出できなかった場合でも提出は可能であり、遅延した理由を説明する文書を添付して速やかに提出する(A1-4)。また、「特定技能」の在留資格で在留している間に発生した事由については、その後に他の在留資格に変更していたり出国していたりしても届出が必要である(A1-5)。

まとめ

届出制度は令和7年の施行規則改正(定期届出の規定は令和7年6月1日施行)で定期届出の頻度が変わったが、実務上のつまずきは随時届出の種別・起算日・期限の理解に集中している。特に、自己都合退職時の届出種別の誤りと、登録支援機関が随時届出を代わりに提出できない点は、受入れ機関・登録支援機関の双方で確認しておくべき論点である。

参考文献

あわせて、協議会・受入れ機関要件の名称混同については特定技能の協議会・受入れ機関要件、名称混同と実務上の注意点、受入れ見込数・人数枠の誤解については特定技能の受入れ見込数・人数枠、実務で誤解されやすい4つの論点、制度改定の反映タイムラグについては特定技能、令和8年1月23日改定の反映タイムラグ問題、登録支援機関に固有要件を課す分野の横断整理については登録支援機関への委託要件、特定技能19分野を4つの型で横断整理、木材産業分野の協議会加入手続きについては木材産業分野の協議会加入、2段階手続きの実務フロー、リネンサプライ分野の位置づけについてはリネンサプライは工業製品製造業の一区分ではない、自動車運送業分野の日本語要件については自動車運送業の日本語要件、参照枠とJLPT換算の混同に注意、支援計画の義務的支援10項目の基準適合ラインについては義務的支援10項目の基準適合ライン、「望ましい」と「義務」の見分け方を参照されたい。

本稿は2026年10月14日時点で一次資料と照合した実務メモです。