1号特定技能外国人支援計画の「義務的支援10項目」は、多くの解説記事が項目名と概要を列挙するにとどまっている。しかし実務上重要なのは、運用要領別冊が〔義務的支援〕として示す内容(一部の項目では「適切に行ったとはいえない」という基準も示されている)と、主に〔任意的支援〕として「望まれます」などと示す内容の違いである。この2つを混同したまま支援計画を作成・実施すると、基準不適合を指摘されるか、逆に過剰な体制を組んでしまうことになる。本稿では、令和7年4月1日施行の改正点も含め、10項目それぞれの基準適合ラインを整理する。
1. 令和7年4月改正:共生施策の確認義務
令和7年2月17日公布・同年4月1日施行の改正により、支援計画の基準に新たな要件が加わった。1号特定技能外国人が活動する事業所の所在地及び住居地が属する地方公共団体が実施する共生施策を確認し、これを踏まえて作成した支援計画でなければならない。(出典:特定技能外国人受入れに関する運用要領 p.96〜97/令和7年4月1日からの運用変更点の説明資料)
実務上見落とされやすいのは、支援計画への記載(確認した市区町村名・確認日・確認方法)だけでなく、所属機関が市区町村に対して「協力確認書」を提出する義務がセットになっている点である。確認したことの記録だけで終えているケースが散見されるが、これは改正の趣旨を満たしていない。(出典:特定技能外国人受入れに関する運用要領 p.80〜81)
2. 10項目の基準適合ライン
(1)事前ガイダンス
対面またはテレビ電話等で本人確認を行った上で実施することが要件であり、文書郵送やメール送信のみでは基準を満たさない。実施時間は3時間程度行うことが必要と考えられるとされ、技能実習生等を同一機関で引き続き雇用する場合であっても、1時間に満たない場合は事前ガイダンスを適切に行ったとはいえないとされる。記録は事前ガイダンス確認書(参考様式第5-9号)への署名取得が必須。(出典:運用要領別冊(支援)p.8〜12)
(2)出入国時の送迎
出国時は保安検査場前までの同行確認が必須。港への送迎だけで終える運用は基準不適合にあたる。登録支援機関が車両で送迎する場合は道路運送法の許可が必要な点にも注意。(出典:運用要領別冊(支援)p.12〜13)
(3)住居確保
1人当たり7.5㎡以上の居室提供または確保支援が必要(技能実習2号等から在留資格を変更する場合等で、所属機関が既に確保している社宅等への居住を本人が希望する場合を除く。この場合も、寝室は1人当たり4.5㎡以上が必要)。所属機関等が自ら賃借人となって社宅等を貸与する場合は、それによって経済的利益を得てはならず、費用を徴収する場合は実費に基づく合理的な額とする必要がある。(出典:運用要領別冊(支援)p.14〜17)
(4)生活に必要な契約支援
銀行口座・携帯電話・ライフライン契約の書類提供と窓口案内、必要に応じた同行が求められる。技能実習からの転換で既に契約済みの場合は実施不要。(出典:運用要領別冊(支援)p.17〜18)
(5)生活オリエンテーション
入国後遅滞なく、十分に理解できる言語で実施。新規に受け入れる場合は、十分に理解するために、少なくとも8時間以上行うことが必要と考えられるとされている。技能実習2号良好修了者や留学生等を同一機関で引き続き雇用し、生活環境に変化がない場合であっても、4時間に満たないときは生活オリエンテーションを適切に行ったとはいえないとされる。動画視聴による実施も可能だが、質問対応体制の確保が条件。記録は生活オリエンテーション確認書(参考様式第5-8号)。あわせて、必要に応じて、関係機関への同行その他の必要な支援を行う必要がある(特定技能基準省令第3条第1項第1号ホ)。(出典:運用要領別冊(支援)p.18〜19)
(6)日本語学習の機会提供
支援の方法は、①日本語教室等の入学案内の情報提供と、必要に応じた入学手続の補助、②自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座の情報提供、③登録日本語教員等による日本語の講習の機会の提供のいずれかで、本人の希望に基づいて行う必要がある。(出典:運用要領別冊(支援)p.26)
(7)相談・苦情への対応
週当たり勤務日3日以上・休日1日以上に加え、相談しやすい就業時間外(夜間)等にも対応できる体制が求められる。なお、相談・苦情専用のメールアドレスの設置などにより可能な限り休日や夜間においても対応可能な体制を整えること、緊急時の連絡先を設け基本的にいつでも連絡が受けられる体制を構築することは「望まれます」とされており、こちらが努力目標にあたる。対応言語が外国人にとって理解できない言語である場合は基準不適合。(出典:運用要領別冊(支援)p.27〜28)
(8)日本人との交流促進
地域行事の情報提供だけでなく、参加手続の補助までが求められる。(出典:運用要領別冊(支援)p.29〜30)
(9)転職支援
外国人の責めに帰すべき事由によらない契約解除の場合、次の受入れ先確保のための支援(業界団体等を通じた情報提供・職業安定機関への案内・推薦状作成・職業紹介のいずれか)と、求職活動のための有給休暇付与が義務。所属機関が支援の全部を自ら実施している場合で、倒産等により転職の支援が実施できなくなることが見込まれるときは、それに備えて、代わりに支援を行う者(登録支援機関、関連企業等)を確保する必要がある。あわせて、離職時に必要な行政手続についての情報提供も、行わなければならない支援である。(出典:運用要領別冊(支援)p.30〜31)
(10)定期的な面談・行政機関への通報
3か月に1回以上、外国人本人及びその監督者の双方と面談を行う。オンライン実施は面談対象者(本人とその監督者)の同意を要件に認められるが、特定技能雇用契約の終了の日から1年以上、録画を保管する義務がある。面談で法令違反を知った場合、労働基準監督署等への通報を怠ると基準不適合となる。漁業分野は無線・船舶電話での連絡と帰港時面談という特例がある。(出典:運用要領別冊(支援)p.32〜33)
3. 「全部委託のみ基準適合みなし」の原則
支援計画の実施を登録支援機関に全部委託した場合に限り、基準に適合しているものとみなされる。一部を委託する場合は、所属機関自身が、支援計画の適正な実施に係る基準に適合している必要がある。この点は、登録支援機関を紹介・提携する立場からも、所属機関に対して明確に説明すべき論点である。(出典:特定技能外国人受入れに関する運用要領 p.92・p.98〜99)
まとめ
義務的支援10項目は、項目名を押さえるだけでは実務上不十分である。運用要領が定める時間・体制・記録の基準ラインを正確に把握し、「望ましい」と「適切に実施したとはいえない」を区別して運用することが、基準不適合の指摘を避ける鍵となる。
参考文献
- 1号特定技能外国人支援に関する運用要領-1号特定技能外国人支援計画の基準について-(運用要領別冊)(出入国在留管理庁)
- 令和7年4月1日からの特定技能制度の運用変更点の説明資料(出入国在留管理庁、令和7年3月)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(出入国在留管理庁)
あわせて、協議会・受入れ機関要件の名称混同については特定技能の協議会・受入れ機関要件、名称混同と実務上の注意点、受入れ見込数・人数枠の誤解については特定技能の受入れ見込数・人数枠、実務で誤解されやすい4つの論点、制度改定の反映タイムラグについては特定技能、令和8年1月23日改定の反映タイムラグ問題、登録支援機関に固有要件を課す分野の横断整理については登録支援機関への委託要件、特定技能19分野を4つの型で横断整理、木材産業分野の協議会加入手続きについては木材産業分野の協議会加入、2段階手続きの実務フロー、リネンサプライ分野の位置づけについてはリネンサプライは工業製品製造業の一区分ではない、自動車運送業分野の日本語要件については自動車運送業の日本語要件、参照枠とJLPT換算の混同に注意、特定技能の届出(随時届出の種別・起算日・期限)の誤解については特定技能の届出、「期限内到達」と「自己都合退職=受入れ困難届出」の誤解を参照されたい。
本稿は2026年10月14日時点で一次資料と照合した実務メモです。

